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■【障がい者(障害者)就職・採用・転職ノウハウ】

第16回「就職・転職ケーススタディ 事例-4『円満な退職は、早めの相談』」

今回は在職中に就職活動を行い、めでたく内定を得たちょうどその時、急に仕事が忙しくなってしまったケース。
「今、こんなに忙しいこのタイミングに“退職の話”は、どうも切り出しにくいなぁ」という悩みを抱えた方のお話です。これも珍しくは無い事例でしょう。

■Dさんの事例

早めの相談
■ 年齢/性別:30代後半・男性
■ 在 住:埼玉県
■ 障 害:聴覚 2級
■ 業種/職種:外資系メーカーでの一般事務

Dさんは先天性の聴覚障害で補聴器を利用しています。音声を聞き取ることは困難ですが、読唇ができるので筆談を使用することなく、対面での日常的なコミュニケーションが可能です。けれど、業務上の打ち合わせや就職活動での面接などでは、正確なやり取りのために筆談を行うようにしています。今回の転職活動の面接では、私も同席して筆談のサポートをしました。

聴覚に障害のある方々とお話をする場合「自分の話のニュアンス・雰囲気や、その話の意図を上手く伝えることができているのか?正しく理解してもらえたのか?」不安になることがよくあります。しかし、何度も確認をするのは失礼な気がしてしまいます。 それに、確認に対する答えが微妙に期待と違う場合でも、ただ単に「本人の頭の中では正しく理解をされているけど、口に出して発言される際の発語が不慣れなために、微妙な違いになっているだけ」かもしれないし、文字(筆談)での回答の場合も同様に「細かなニュアンスなど抽象的な部分も伝わってはいるのだけれど、文字に表す時はシンプルな言葉・文章になっているだけ」の可能性もあります。そんな風に「私自身が相手の理解度をきちんと把握できていないのでは?」という不安を常に感じています。

けれどもDさんと話している時は、そういった不安をあまり感じませんでした。転職活動中は簡潔なメールのやり取りで十分意思疎通ができ、面接に同行している時もほとんど私のサポートは不要で、面接官も彼のことを良く理解していただけたようです。そして、そんな面接の結果、Dさんの今までのキャリア・経験・スキルなども総合的に評価してもらうことができ、採用内定の提示がありました。

2月に応募書類を提出、3月に面接、3月中旬には内定の提示があり…と順調に入社に向けて進んでいました。「3月末までに退職の話を勤務先にすれば、4月末には円満に退職できるかな?」と考えていた内定先の人事の方と私は、5月1日もしくはゴールデンウィーク明けの5月11日の入社を想定していました。

ところが、3月下旬に行った入社前健康診断の血液検査で、1つの項目が再検査となり、健康診断をもう1回受けることになりました。そして、その再検査が4月初旬に実施されることになったため、Dさんは退職の相談を勤務先にすることなく4月を迎えることになりました。

2回目の健康診断では無事に全項目OK!4月上旬にずれ込みはしましたが「やっとDさんの勤務先に退職のお話をすることができる」と、私から健診結果をDさんに伝え、同時に「お勤め先の上司に退職の相談をして下さいね!」とメールで連絡を入れました。

すると、彼から次のような返信がありました。

■4月8日:Dさん ⇒ 大畑

嬉しいお知らせありがとうございます。

今週から急に仕事が忙しくなってきたので、退職の意思を伝えるタイミングは“今すぐ”ではないかなぁ…と思っています。 業務スケジュールを見て同僚と話し合い、確認してから上司に相談するつもりです。
タイミングを見計らって、安心して退社できるようにきちんと話をしたいと思っています。有休が残っていてその消化期間もあるので、しばらく働いてからとなると入社は早くても6月になりそうですが大丈夫でしょうか?


4月9日の朝、このメールを読んだ私は、取り急ぎ内定先の人事担当者に話をし、Dさんには円満に退職することを最優先に行動してもらいつつ、6月1日入社の方向で準備を進めることにしました。
そして、彼には次のように連絡を入れました。

■4月9日:大畑 ⇒ Dさん

Dさん、おはようございます! 内定先の受け入れ希望日は、5月1日以降であれば、いつでもOKとのことでした。けれども、可能であればゴールデンウィーク明けの5月11日あたりには入社していただけると嬉しい・・・という感じです。

退職の話を上司にすることを先延ばしにすることは、どんなに忙しい時でも、あまり良いとは思いません。 もし私が現在の勤務先の上司の方の立場だとすると「辞めるのなら、早く相談してもらったほうが、Dさんの後任の人の手配や、チーム内での人員のやりくり等を早めに考えることができ、業務の引継ぎがスムーズに進むように手が打てる」と考えるはずです。

円満に退職するために重要なことは、Dさんがいつまで勤務を続けるのが現在の勤務先としては一番助かるのか?を考慮し、退職の意思を伝えるのと同時に、今の仕事の区切りをどうするのか?(退職予定日をいつにするのがベストなのか?)を早く相談することです。 今の仕事が忙しくなってきたのならなおのことです。「退職の意思表示」と「退職日の相談」のタイミングが円満退職には大切なのです。

この意思表示と相談を早くしないと、現在の勤務先も困ると思いますが、内定先も困ってしまいます。 先ほどから申し上げているとおり、まずは早めに意思表示と相談をして、上司の反応を確認してください。 上司の方や会社が、どのような反応をされるか分かりませんが、もし、スムーズに「そうですか、残念ですが次が決まっているなら仕方ないですね、では、切りよく4月末退職でいいですよ」等とおっしゃってくださるならば、4月下旬に残りの有給を使う承認をもらって、4月30日に退職を予定しましょう。内定先担当者には大畑がそのように報告します。

もし仮に、Dさんの退職を認めたくない(辞めさせたくない)というような反応があった場合…例えばですが、上司が退職の話を聞いてはくださっても、のらりくらりと「今は忙しいし、ゴールデンウィークが過ぎればもっと仕事が増えるから、退職の話は、6月ごろまで待ってくれないか?」等と言われる可能性もありますね。もし、6月を大きく過ぎる入社となると、さすがに内定先としてはDさんの代わりに早く入社できる別の人を今から改めて採用する、という選択をすることになると思います。

今お話したのは、想定できる最悪のケースですが、そんなことにならないように、上司の方や人事の方と退職の相談を早くしておくことが大切だと思います。 そして、上司・会社の反応・様子を、大畑へ教えてください。現在の勤務先と内定先の双方にDさんが円満な関係を保ちつつ、転職ができるように最善の調整をしますので。 よろしくお願いします!


結局この後、Dさんは上司と相談をして円満に、有給休暇も消化した上で5月末に退職しました。そして、内定していた会社には、無事6月1日の入社となりました。

“担当している業務が忙しくなってきてしまった”という状況と“そんな最中で退職の話を切り出しにくい”といったDさんの心情は良く理解できます。しかしながら、会社のことをきちんと考え、円満退職を望むからこそ「退職の意思表示」と「退職日の相談」を早めに行うべきなのです。
今回は、Dさんの早めの対応により、スムーズな引継ぎ・円満な退職ができました。そして内定していた希望の会社でも晴れ晴れとした気持ちで入社日を迎えることができたとのことで、本当に嬉しく思っています。

今になって振り返ってみると、在職中の方が円満に退職するための支援やアドバイスを、それまでは口頭で(電話で)していましたが、繊細だったり微妙なニュアンスが必要だったり・・・という内容も多々あるため、伝え切れていないこともあったことに気付きました。「大切なこと、重要なことはきちんと“文字”にしてお伝えする」というのは、非常に重要です!
また同時に、聴覚障害のあるDさんとの、文字・メールによるやり取りのおかげで、今回のケーススタディ -4「円満な退職は早めの相談」をまとめることができました。

Dさん、色々と勉強させていただき、ありがとうございました!新転地でのご活躍、心から期待しています!!


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